ピロリ菌の除菌

H. Pylori Eradication

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌と診断されたら?

ピロリ菌がいると診断された場合、除菌治療によりピロリ菌を退治する必要があります。ピロリ菌を退治すると胃十二指腸潰瘍再発の可能性を約70〜90%減らし、胃がんの発症リスクを1/3に抑える効果が確認されています。また、年齢が若いうちに治療すると効果が一層高い事が分かっています。ただし、ゼロになるわけではないので注意が必要です。ピロリ菌の除菌に一度成功すると、大人になってから再感染する事はほとんどありません。医師と相談の上、きちんと除菌する事が大切です。

ピロリ菌の除菌について

ピロリ菌を除菌するためには、抗生物質2種類と胃薬を組み合わせ1週間服用して頂きます。その後、最低4週間空けて除菌の判定を行い菌が消滅しなかった場合は、別の抗生物質を服用頂き、さらに1週間様子を見ます、1度除菌が成功すると、再発する確率は極めて低くピロリ菌感染について繰り返し検査する必要は一般的にはありません。ただし胃がんの多くは、ピロリ菌の感染が原因とされる胃炎や萎縮によるものです。除菌後、胃がんのリスクも約3分の1にまでには減少しますが完全にゼロにはなりません。その為、除菌後も継続して定期的に内視鏡検査を受けることをお勧めします。ピロリ菌の除菌治療で使用する薬は、胃酸分泌を抑制するものや抗生物質などがあります。また、必要に応じ胃の粘膜を保護する薬も併用頂きます。これらを1週間服用することで約8~9割の患者様は除菌に成功します。

一般的な段階別の除菌方法

1次、2次除菌では3種類の薬を1日2回×7日間、服用して頂きます。

1次除菌
使用薬:クラリスロマイシン、タケキャブ、アモキシシリン
期 間:7日間
2次除菌
使用薬:メトロニダゾール、タケキャブ、アモキシシリン
期 間:7日間
3次除菌
タケキャブ、アモキシシリンに加えて、ニューキノロン系の抗菌薬を服用頂きます。
※健康保険の適用がなく、全国一律ではありません。

ペニシリンを用いない場合の除菌

タケキャブを服用頂いた上で、抗菌薬としてメトロニダゾール、クラリスロマイシン、テトラサイクリン系、ニューキノロン系、などから選択し服用頂きます。
※通常は健康保険の適用がありません。

除菌治療が保険適応の患者

下記に該当される患者様はピロリ菌の除菌治療に保険適応が認められています。胸やけの強い方など除菌後に副作用が残るケースもあるので、事前に医師の診察を受けて頂き対応しております。

  • 胃MALTリンパ腫の患者様
  • 早期胃がんに対する内視鏡治療後の患者様
  • 特発性血小板減少性紫斑病の患者様
  • 内視鏡や造影検査で胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断された患者様

※料金やその他についてはお気軽にお問い合わせください。

胃カメラなし、保険適応でピロリ菌の検査や除菌を希望の方へ

ピロリ菌の検査及び除菌治療では、胃カメラ検査により胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断がされた場合に保険が適応されます。その為、胃カメラなしでピロリ菌の検査や除菌を保険適応で行うことはできません。しかしながら、「胃カメラなしで、ピロリ菌の検査・除菌をしたい」というご希望も多く頂きます。当院では、保険の適用ができない方を対象に自費でのピロリ菌検査・除菌治療も対応しております。ご希望の方はお問い合わせください。

ピロリ菌の除菌治療の現状

1週間の内服治療とはいえ、薬の服用であるため副作用がでる可能性もあります。主な副作用は下痢、軟便、味覚異常、発疹やかゆみ、肝機能異常などです。また、除菌治療ができない基礎疾患をお持ちの患者様もいらっしゃいます。除菌治療を受ける場合は必ず診察を受けて頂き、ピロリ菌の除菌治療について詳しい説明、薬剤アレルギーの有無などを確認する必要があります。

ピロリ菌除菌治療後のアフターフォロー

除菌薬を全て服用頂き、1か月後以上から除菌判定の検査をさせて頂きます。尿素呼気テスト・便中ヘリコプター・ピロリ抗原で、ピロリ菌が消滅したかの判定が可能です。除菌に成功したからといって胃がんなどの病気に必ずならないというわけではありません。ピロリ菌に感染している期間が長いと、胃の粘膜が正常に戻るのに時間がかかります。除菌後も胃の状態を確認するために定期的に内視鏡検査を受けることをお勧めします。

実際の除菌例

実際に当院で除菌治療をされた患者様の治療内容やその後の経過です。

ケース1. 40代(女性) しばらく胃痛が続いている
  • 症状
    胃痛が続き様子を見ていても収まらないとのことで、胃カメラ検査を希望されご来院されました。
  • 胃カメラ検査
    検査では潰瘍や癌などの疾患はありませんでしたが、ピロリ菌に感染し「萎縮性胃炎」を発症していました。
  • 治療方法
    ピロリ菌の感染によって起こる「萎縮性胃炎」は、慢性的な胃痛や胃もたれなどの症状が出ます。感染源のピロリ菌を消滅させるため、HP菌除菌薬(制酸剤と2種類の抗生剤)を服用して頂きました。
  • 治療後の経過

    除菌薬の服用を続けて頂くと、終了後は胃痛がなくなったことを実感されました。服用してから1か月後、ピロリ菌の除菌治療が成功したかどうか再検査のために来院頂きました。呼気検査を行って頂き、ピロリ菌は消滅し除菌は成功していました。その後、ご自身で経過を見て頂きましたが、痛みから解放され快適に暮らせているとのことです。

    ※あくまでもこちらのお客様の場合です。ピロリ菌に感染しても無症状の方もおられます。
    ※胃痛があるからと言って必ずしもピロリ菌に感染しているとは限りません。
    ※胃痛はピロリ菌以外の疾患の可能性もあるので、お早めに一度検査をおすすめします。
    ※胃の症状が続いている方は一度ピロリ菌の有無を調べてみることをおすすめします。

ケース2. 30代(女性) ピロリ菌検査が陽性との判定
  • 症状
    職場の定期診断で受けたピロリ菌検査が陽性反応だったということでご来院されました。特に自覚症状はないとのことです。
  • 診察
    ご持参頂いた定期診断の結果によりピロリ抗体が高値であることが判明しました。過去にピロリ菌の除菌経験もないことから、現在もピロリ菌が生存している状態と考えられました。
  • 検査
    ピロリ菌感染が認められると胃がんのリスクも考えられるため、直ちに胃カメラを行いました。感染により胃癌を発症していないか、胃炎の状態はどうかなどを診ました。結果、胃がんは発症していませんでしたが、感染が原因の「萎縮性胃炎」を発症していました。
  • 治療方法
    感染が持続してしまうと胃炎がさらに広がり、胃痛や胃もたれなどの症状が出る可能性が考えられます。また今後、胃癌の発症も懸念されるため直ちに除菌治療を行いました。ピロリ菌除菌薬(制酸剤と2種類の抗生剤)を服用して頂きました。
  • 治療後の経過

    除菌薬の服用が終了し約1か月後、ピロリ菌の除菌状態を確かめるため尿素呼気試験を行いました。結果、除菌は問題なく完了していましたが、発癌のリスクは0にはならないため、今後も健康のため定期的な胃カメラ検査を受けるようお伝えしました。

    ※除菌が終了した場合でも抗体反応が陽性となる方がおられます。
    ※除菌歴がある方は血液検査にて偽陽性と出る可能性もあります。
    ※血液検査で偽陽性別の場合、別の検査でピロリ菌を調べる必要があります。

ケース3. 30代(男性) ペニシリンアレルギーをお持ち
  • 症状
    過去に医師からピロリ菌がいると診断されましたが、「ペニシリンアレルギーがあり除菌ができない」と言われ未除菌の状態とのことでした。自覚症状はないものの、どうにか治療法はないか相談しにいらっしゃいました。
  • 診察
    現在のピロリ菌の有無を診断するため、尿素呼気検査を行うと高値であり現在も感染が認められました。また、最後の胃カメラ検査は3年ほど前とのことで胃カメラも行いました。胃がんや胃炎の状態を確認したところ、胃癌はなかったものの、ピロリ菌の感染が原因の「萎縮性胃炎」が認められました。
  • 治療
    患者様はペニシリンアレルギーをお持ちの為、ペニシリンを使用しない方法でピロリ菌の除菌を行いました。ピロリ菌除菌薬(制酸剤と2種類の非ペニシリン系抗生剤)を服用して頂きました。
  • 治療後の経過
    除菌薬の服用が終了し約1か月後、ピロリ菌の除菌状態を確かめるため尿素呼気試験を行いました。通常ではピロリ菌の除菌においてペニシリン系の抗生剤が使用されます。そのため、ペニシリンアレルギーを持っていると除菌ができないと思われていることもあり、今回のように医師も勘違いしている場合があります。しかし、当院ではペニシリンを使用せずとも除菌治療は可能です。保険外ですが、自費診療では対応可能ですので、ペニシリンアレルギーの患者様の除菌治療もお引き受けいたします。ぜひ一度ご相談下さい。
ケース4. 60代(男性) 空腹時に胃痛のようなものを感じる
  • 症状
    数か月ほど前から空腹時に胃痛のような症状があり、特にここ最近で痛みが強くなったということでご来院されました。
  • 診察
    空腹時の胃痛がある、とのことから十二指腸潰瘍の可能性が考えられました。そこで腹部エコーにて十二指腸や胃の状態を確認することになりました。
  • 検査
    エコー検査の結果、胆のうや膵臓に病変はありませんでしたが、十二指腸の壁に肥厚や陥凹がありました。十二指腸潰瘍を疑い、引き続き胃カメラ検査を行うと実際に十二指腸潰瘍だと確定しました。また、ピロリ菌検査で陽性だと判明しピロリ菌が原因の「十二指腸潰瘍」だと診断しました。
  • 治療方法
    胃や十二指腸の粘膜は常時胃酸にさらされている状態ですが、健康な場合は粘膜の防御機能により胃酸で粘膜が傷つかないよう守られています。しかし、ピロリ菌に感染するとこの防御機能はきちんと機能できなくなり、胃酸にさらされてしまいます。すると、粘膜がただれ傷ついてしまい一部が欠損し潰瘍になります。潰瘍については、制酸剤により胃酸を抑え、粘膜保護剤を使用し粘膜を保護する治療を行います。また、十二指腸潰瘍の発症原因であるピロリ菌は除菌し消滅しないと潰瘍が再発するため、潰瘍が改善後すぐに除菌治療を行いました。
  • 治療の順番

    ①制酸薬:※胃酸の分泌を抑える薬
    胃酸分泌を抑え、胃の粘膜の再生力により潰瘍を改善させます。プロトンポンプ阻害薬という薬を処方しました。

    ② 粘膜保護薬
    胃の粘膜の防御機能を回復させ潰瘍による胃痛を抑えます。

    ③食生活の指導
    しばらくの間、刺激の少ない粥や消化のよいものを召し上がるようお伝えしました。

    ④ピロリ菌除菌薬
    ピロリ菌除菌薬(制酸剤と2種類の抗生剤)を服用して頂きました。

  • 治療後の経過

    投薬を開始後、3日目になるとほぼ痛みは感じなくなったとのことでした。食事は通常食に戻し引き続き薬を服用して頂いたところ、2週間後の再診時はほぼ回復されていました。潰瘍の改善は良好と判断し、次に除菌薬を1週間服用して頂きました。その1か月後に呼気検査でピロリ菌の除菌状態を確認したところ、除菌が成功しピロリ菌は消滅していました。ピロリ菌除菌後も胃癌発症のリスクはあるため、健康のため胃カメラ検査を定期的に受けて頂くようお伝えしています。

    ※十二指腸潰瘍は胃の辺りに慢性的な痛みがあり空腹時に強くなるという特徴があります。
    ※大きな潰瘍の場合はエコー検査でわかることもあり胃カメラ検査にて確定診断をします。
    ※ピロリ菌の関与が多く再発防止のためには徹底したピロリ菌除菌が大切です。

ピロリ菌の除菌に関してよくあるご質問

1次除菌、2次除菌の成功率はどのくらいでしょうか?
目安ですが1次除菌の成功率は約80~90%前後、2次除菌の成功率は約90%です。
2次除菌も失敗するとどうなりますか?
使用する 抗生剤を変更して3次除菌、4次除菌へと進みますが、この場合はいずれも保険は適用されず自費診療となります。
除菌薬の副作用としてどんな症状がありますか?
下痢、便秘、発疹、腹痛、肝機能障害などがでる場合があります。軽い場合は内服終了後に自然と軽快しますがひどい場合はご相談下さい。
除菌後に逆流性食道炎になるリスクがあるそうですが本当ですか?

多くはありませんが、除菌後に胃酸の分泌機能が改善し胸やけなど逆流性食道炎症状が出る場合があります。軽い症状がほとんどですが稀に重度の逆流性食道炎を発症する場合があります。

除菌後は胃の調子がよくなるんでしょうか?

はい、除菌により胃粘膜の萎縮が改善されこれまで以上に胃酸がよく分泌されます。その結果として食欲が増すことがあります。

やはりピロリ菌は除菌した方がいいでしょうか?

日本ヘリコバクター学会によると、ピロリ感染は全例除菌が推奨されています。除菌により胃癌発生のリスクが抑制できると証明されているので除菌をおすすめします。

ピロリ菌の除菌に成功しましたがもう心配はないでしょうか?

現状しばらくは安心です。しかし、ピロリ菌感染によるリスクは除菌後の数10数は続きますので、健康のために定期的な胃カメラ検査をおすすめします。

除菌後に再感染することはあるんでしょうか?

ほとんどの場合ありません。除菌後に再感染する確率は約年間0.3%です。

ピロリ菌が除菌されると胃癌のリスクはなくなるということでしょうか?

確かにピロリ菌の除菌に成功すると胃がんの発生リスクは大幅に減少します。しかし、胃癌発症を完全にゼロにはできません。確率としてはかなり少ないですが、発生リスクがあるため定期的な胃カメラ検査をおすすめします。

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