潰瘍性大腸炎

Ulcerative colitis

指定難病潰瘍性大腸炎の解説

潰瘍性大腸炎

下記のような症状は潰瘍性大腸炎の可能性があります

  • 激しい下痢が続いている
  • 便に血が混ざっている
  • 発熱
  • 長期間の血便による貧血
  • 体重が不自然に減少している

潰瘍性大腸炎とは?

大腸の一番内側の粘膜に炎症が起きて、潰瘍やびらんができる炎症性疾患の一つで、厚生労働省の特定疾患に指定されている「難病」です。これらの病変が起こる位置は、大腸に限られており、通常肛門に近い直腸から病変が始まることが多いのが特徴です。

潰瘍性大腸炎は、症状の波があり、下痢や血便の状態が出ている期間(活動期)と、治療効果が出ており症状が治まっている状態(寛解期)を繰り返します。完治させる方法が現在は見つかっておりませんが、規則正しい食生活やライフサイクル、治療により寛解期を維持することに成功している方も多くいらっしゃるため、悲観的になりすぎず治療に注力しましょう。

また、潰瘍性大腸炎は合併症も引き起こしてしまう可能性も存在します。腸管に生じる「腸管合併症」と腸管以外に生じる「腸管外合併症」です。

潰瘍性大腸炎の分類

潰瘍性大腸炎は症状の程度や炎症の範囲で分類されます。病変で分類される場合は、

  1. 直腸炎型
  2. 左側大腸炎型
  3. 全大腸炎型

臨床経過による分類であれば

  1. 初回発作型
  2. 再燃寛解型
  3. 慢性持続型
  4. 急性劇症型

重症度による分類であれば

  1. 軽症
  2. 中等症
  3. 重症
  4. 劇症

このような分類が可能です。

潰瘍性大腸炎の患者数と発症年齢

元々潰瘍性大腸炎は、欧米に多い病気であり日本では稀なものであるという理解が一般的でした。しかし、近年の調査によると毎年患者数は10,000人~15,000人程度の増加をみせています。(難病情報センター2022年2月情報)男性と女性で発症に差はなく、発症年齢は20~30歳代に多く認められます。尚、生存率については重度の合併症を引き起こしたなどの状況を除けば、一般の方と同じくらいであると報告されています。

潰瘍性大腸炎の原因

現在でも、正確な原因は解明されていませんが、

  1. 遺伝的要素
  2. 食べ物や化学物質などの環境因子
  3. 腸内細菌
  4. 免疫異常

このような要因が重なり合って発症する病気と考えられます。今現在、完治させる治療方法は無い為、現在できる治療法で症状を抑えながらこの病気と、上手に付き合っていく必要があります。

潰瘍性大腸炎の検査・診断方法

まずは問診により、症状の経過や病歴を調べます。その後、血液検査と便検査により、他の感染症への感染の可能性を消去していきます。そして大腸の状態をより詳細により正確に把握するために、大腸内視鏡検査、注腸X線検査などの画像検査が行われ、他にも便潜血検査などを実施し、これらの検査結果を用いて潰瘍性大腸炎は、総合的かつ慎重に診断されます。

※注腸X線検査:肛門からバリウムを入れ、レントゲン撮影する検査。
※便潜血検査:便に血液が付いたり、混ざったりしていないかを調べる検査。

当院の大腸内視鏡検査

当院は、消化器・内視鏡専門の医療機関として、患者様皆様に大腸カメラを安心安全快適に受けていただけるよう日々対策しております。冒頭の症状に該当していたり、潰瘍性大腸炎かもしれないと不安な方は、是非下記より大腸内視鏡検査の詳細をまずはご覧ください。

潰瘍性大腸炎の治療方法

主に3つの方法、内科的治療と外科的治療と食事療法があり、主体となるのは内科的治療です。炎症には前述したように炎症が強い時期である「活動期」と呼ばれる状態と、症状が収まっている「寛解期」と呼ばれる2つの状態があります。「活動期」の時は、症状を抑える薬を、「寛解期」の時は寛解状態を維持するための薬を使い治療します。したがって、症状が収まっていたとしても、処方された薬を飲み続けることが重要です。

外科的治療は、内科的治療の効果が見られない場合、または内視鏡検査にて多量の出血や、穴が開いていることが確認された場合、癌の疑いがある場合などに実施され、大腸の全てを摘出します。全摘出後も、近年は小腸で便をためる回腸嚢と呼ばれるものを作成することで、術後は特に術前と変わりない生活を送ることができます。

薬物療法では、

  • 5-ASA製剤
  • 副腎皮質ステロイド
  • 免疫調節薬
  • 免疫抑制薬
  • 抗TNF-α抗体製剤(生物学的製剤)(レミケード, ヒュミラ、シンポニ―等)
  • 抗IL 12 /23抗体製剤:ステラーラ
  • IL-23p19抗体抗 オンボ―
  • 23/p40抗体 スキリージ
  • 抗α₄β₇インテグリン抗体製剤:エンタイビオ
  • ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤:ゼルヤンツ・ジセレカ
  • リンボック

といった薬を使います。症状の重さに応じて、薬の強さも変化します。

また、他にも血球成分除去療法というものや外科的治療、つまり手術療法があります。手術療法は下記のような場合は必要になる可能性があります。

  • 大量出血
  • 中毒性巨大結腸症(大腸が極端に膨張して膨らんでしまった状態)
  • 穿孔(大腸に穴が開くこと)
  • がんの疑い
  • 薬物療法などの内科的治療に反応しない重症例や難治例
  • 腸管以外での症状が治療で改善しない場合や小児の成長障害
  • 副作用のため薬剤が使用不可

潰瘍性大腸炎は、大腸に発症が限られるため原則大腸の全摘出術式になります。昨今は陣肛門を使わずに、肛門を残せるようにする方法が主流になりつつあります。

食事療法も潰瘍性大腸炎と付き合っていくためには必須です。詳しくは当院へもご相談ください。

難病医療費助成について

潰瘍性大腸炎は、指定難病に該当するため症状の程度が一定以上の場合は、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、難病情報センターのホームページをご参照ください。

潰瘍性大腸炎の疑いがある方は当院へご来院ください

潰瘍性大腸炎は、難病指定されている通り、完治が難しい病気です。適切な検査・治療によって寛解状態(症状が落ち着いている状態)を維持し、再燃(症状が悪化している状態)を抑制することを繰り返していくことになります。症状悪化防止のためには、専門医による適切な治療が必須です。当院では、患者様の精神的なストレスの背景も丁寧に考慮したうえで、診察・治療を実施しております。まずはお気軽にご相談ください。