下記のような症状の下痢は危険を知らせるサインである可能性があります
- お腹の痛みがある下痢が長期間続いている
- 便が非常に水っぽい、または泥のようになっている
- 一日の便意が以前と比べて増加し、お腹を下してしまっている
- 下痢に血が混ざり赤っぽくなっている
- 便秘なのに、下痢状の便が少しずつ出てくる
異常の無い便ならはっきりとした形がありますが、その形状を維持できなくなるほど便中の水分量が増加して、ほとんど液体の泥状で排便されてしまうことを下痢と呼称します。
後述するような原因から、腸内に炎症を起こして、消化吸収に異常をきたしてしまうことで起きてしまいます。もちろん、一時的な下痢もあり得ますが、体の不調を知らせている症状であるため、長期間続いていて放置することは大変危険です。
大きく分けて下記の7つの原因があります。
腸管の蠕動運動(内容物を押し出す運動)に異常が起きることで、腸管内での水分吸収が上手く機能せず、固形の便が生成できなくなります。この運動が異常を来す原因としては、
などが代表的です。
腸管内で炎症が発生することで、下記のような異常が起きます。
上記によって、便が柔らかくなってしまい下痢となります。炎症の原因としては、
などが代表的です。
この場合は、ずっと続くような下痢ではなく、急性の下痢を引き起こします。病原性大腸菌・サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクターなどの細菌感染や、ロタウィルス・ノロウィルスなどのウイルス感染が原因です。
感染経路には下記が代表的です。
潜伏期間は原因により前後しますが、4時間程度~10日くらいと幅があります。
下記のような抗生剤の使用に伴う偽膜性腸炎には注意が必要です。
などが挙げられます。
また胃酸分泌抑制薬は「collagenous colitis(コラーゲン性大腸炎)」という病気によって下痢を起こすことがあります。これは服用を中止することで症状が改善することが多いですが、診断ができないと対処ができません。
アルブミン合成能低下、アルブミン喪失、アルブミン原料の不足(栄養失調)といった原因から、アルブミンの量が低下する「低タンパク質症」の一つが原因になります。低アルブミン血症になると、血管から水が染み出やすくなり、下痢になります。腸も浮腫(皮下組織に水がたまった状態のむくみ)を起こします。
アルブミン合成機能の不調が原因の場合、慢性肝炎、肝硬変、肝不全などが疑われます。アルブミンの喪失が原因の場合、慢性腎臓病、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群などの疾患が疑われます。
胃・膵臓切除の手術後、胆のうの摘出手術後、慢性膵炎などの特別な状況で、下痢が起きることがあります。
最も発生原因として多くあり得るものです。腸は、自律神経の状態に大きく左右されます。精神的なストレスで自律神経が乱れることで、下痢を引き起こします。
また、食べすぎ・アルコールの飲みすぎ、慢性的な偏った食生活などの生活習慣の乱れによっても、下痢は起きる可能性があります。
まずは問診により、下痢の色や状態を伺っていきます。大腸の炎症の可能性がある場合は、大腸内視鏡検査を行い、大腸粘膜を直接観察することで、原因を特定していきます。
3つの方法、薬物治療・水分補給と点滴治療・生活習慣の改善があり、それぞれ原因に対して適切な治療法を選択することになります。
下痢止めを必要に応じて使いますが、上述したような感染性腸炎の場合は、下痢止めを使うことで、ウイルスや細菌を体内に留めることになってしまいます。したがって、患者様によっては無理に下痢を止めることはせず、適切に処置します。
激しい下痢は、脱水症状を引き起こしてしまいます。予防策は、水分補給になります。電解質を多く含有したスポーツドリンクが適当でしょう。経口摂取が難しい場合などは、点滴によって排出されてしまった水分と栄養の補給を行います。
腸と自律神経の関係は非常に密接です。自律神経を整えるために、過度な精神的なストレスがかかる環境はできるかぎり避けるように生活に対策をする必要があるでしょう。また、食事に関しても、偏りは意識することで回避ができます。一日三食、バランスよく腸や胃に負担がかからないものを摂取するようにしましょう。また十分な睡眠や適度な運動も有効です。
下痢の症状が継続すると、精神的にも身体的にも辛いものです。
当院では、患者様の精神的なストレスの背景も丁寧に考慮したうえで、外来の診察・治療を実施しております。日常的な症状だからこそ、放置してしまいがちですが、上で挙げたような重大な疾患が原因になっている可能性もあります。下痢症状に、急に悩まされるようになった方、ずっと悩んでいる方はまずはお気軽にご相談ください。